PROJECT:D / 夢吹を統べる者

2023.02.26

夢吹PR企画

夢吹PR企画~PROJECT:D~
この企画では、Wind Ensemble 夢 第9回定期演奏会の見どころを週ごとに紹介していきます。
今週の担当は指揮者のたっきーさんです!



こんにちは、Wind Ensemble 夢で指揮者を務めています、たっきー and Nobodyです!現在大学院1回生で、夢吹に所属して4年8ヶ月経ちます(夢吹の現団員で2番目に長いです)。楽器はホルンで、2回生から夢吹で指揮を務めはじめました。
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私は第9回定期演奏会で4曲の指揮を務めます。そこで、今回のPROJECT:Dでは、私が指揮を務める楽曲について、聴きどころや楽曲への思いをお伝えしたいと思います。長くなってしまいますが、ぜひ最後までご覧ください!

第一部「生命の奇跡/村松崇継・宮川成治(編)」



今回の演奏会の第一部では、USJにまつわる曲たちを演奏いたします。そのうち私が指揮をするのは、生命の奇跡です。

この曲は、代理出産をテーマにしたNHKドラマ10「マドンナ・ヴェルデ〜娘のために産むこと〜」の主題歌です。しかし、2012年〜2015年ではUSJの「ワンダー・クリスマス」のテレビCMのCMソングとしても用いられ、以前まではクリスマスショーでも流れていました(最近は流れていないみたいです)。冬のCMでよく流れていたので、この曲を聴くとUSJをイメージするという方も多いのではないかと思い、この度演奏させていただくことにいたしました。
原曲は少年合唱団Liberaが歌っており、透き通ったボーイソプラノのハーモニーが印象的です。

この編曲では、優しく包み込むような全体合奏の響きはもちろん、金管楽器セクション・木管楽器セクションによる分奏や、様々な楽器のソロにもご注目いただきたいです。
本演奏会では、イケイケな曲たちが続けて演奏された後にこの曲が演奏されます。管楽器の独特な厚みによって再現されるLiberaのハーモニーは、お聴きくださる皆さんの心に染み渡ること間違いなし!

第二部「マゼランの未知なる大陸への挑戦/樽屋雅徳」



第二部では、吹奏楽オリジナル作品を3曲お届けいたします。始めに演奏する曲は、マゼランの未知なる大陸への挑戦です

この曲の題材となったマゼランについて、皆さんはご存知でしょうか?まずは、マゼランについてざっくりと説明したいと思います。
参考:https://www.y-history.net/appendix/wh0901-035.html

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マゼランは、大航海時代の16世紀はじめに活躍したポルトガル人の航海者です。スペインの王による命令で、スペイン→モルッカ諸島の西回り航路の開拓に向かったことで知られています。
マゼランは5隻237人の船団を率いて出航しました。航海では船員の反乱や壊血病に見舞われる中、フィリピン群島の一つであるセブ島にたどり着きます。そこでマゼランは島民と争いを起こし、その争いで命を落としてしまいます
残された船団はなんとかモルッカ諸島に到着し、たくさんの香辛料を手に入れました。その後食糧難などに見舞われ、はじめ5隻237人だった船団は1隻18人となってしまいましたが、世界一周の航海を遂げたのでした。

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拙い説明でしたが、マゼランについて知っていただけたでしょうか?
マゼランは航海中に命を落としてしまいますが、もしマゼランが現世に魂を宿し世界一周を続けたら、どのような冒険が待っていたのであろうかという想像をもとに、この曲は作曲されました。

大波が荒れ狂う海の様子、天災に見舞われる中での航海の過程、そして未知なる大陸を発見したマゼランの心揺さぶられる様子が、劇的な音楽展開により色彩豊かに表現されています。
特に注目してお聴きいただきたいのは、終盤のピアノソロからの音楽です。このピアノソロから導かれるトランペットのソロは、新たな地平線に浮かぶ夕日を象徴するように奏でられ、その後のフィナーレでは、マゼランのまだ見ぬ世界が遥か彼方まで広がっていることを想像させる壮大な音楽が奏でられます。
マゼランが現世を旅する様子をイメージしながら、演奏をお聞きいただけますと幸いです。

第二部「星の生まれる場所で/芳賀傑」



続いて演奏する曲は、星の生まれる場所でです。

この楽曲は、吹奏楽の専門誌である『バンドジャーナル』2021年1月号・2月号の付録楽譜として、編集部からの委嘱で作曲されました。

作曲当時の2020年度は新型コロナウイルスが猛威を奮い、様々な行動に制限がかけられました。「人と会う」ことや「人とのつながり」を強く意識させられたこの時代に、「人と会えることの嬉しさ」や「音を重ねられることの喜び」を再確認できるような曲を、という想いからこの曲は作曲されました。
優しくもどこか孤独を感じさせる曲ですが、終盤では、「皆で音楽を奏でられる」ことと「このかけがえない時間が終わる」ことへの喜びと悲しみの感情が相乗するかのように、旋律・対旋律・伴奏による大合唱が温かく奏でられます。

ところで、この曲のタイトルには、「どこか分からないけどいつか、また必ず会おうね」という別れや再会というニュアンスが込められています。

夢吹も、2020年度に新型コロナウイルスの影響を強く受けた団体の一つでした。当時活動は思うようにできず、演奏会は中止。所属人数は低迷し、一時期は団を畳むかという話も薄ら上がるほどでした。

しかし、当時の運営をはじめとする団員は諦めず、どんなにコロナの影響を受けても、演奏会の延期などの手段を講じながら、夢吹の未来のことを考えました。結局、その代での最後の演奏会は開催できずに終わってしまいましたが、その過程で夢吹への思いは以前よりも強くなりました。

その後コロナの規制が緩和されてからは、演奏会に向けて新たに活動を始めました。コロナ禍を経て、夢吹の活動を成功させようという団員の思いが強まり、規制緩和後初の演奏会では今までにない一体感が生まれたような気がしました。そこから団員が団員を呼び、規模はますます拡大し、現在では70人を超える過去最大規模の大所帯となりました。
コロナ禍での活動はとても苦しいものでしたが、その時の団員の努力があったからこそ、この発展は実現したのではないかと思います。

すみません、話がだいぶ逸れてしまいました。この曲に触れると、この夢吹での活動をつい思い起こしてしまうのです。

今回演奏会に乗っている4回生の多くは、今回で卒団となります。そして中には、コロナ前・コロナ禍・コロナ緩和後、そして現在の活動全てを経験した人がいます。私も指揮者として全ての時期の運営に携わっていましたが、特にこの代はコロナ緩和後に夢吹の発展のために結託して活動を共にした代として、様々な思い出があります。

私は今の夢吹が大好きですが、そう思うきっかけは今の4回生が与えてくれました。そんな4回生含む団員との最後の演奏会で、この曲が演奏できることをとても嬉しく思います。夢吹への想いが詰まった演奏を、当日はぜひお聴きいただきたいです。

第二部「吹奏楽のための第二組曲/A.リード」



さて、最後にお届けする曲は、吹奏楽の巨匠アルフレッド・リードの作品である、吹奏楽のための第二組曲です。

この曲には「Latino Mexicana(ラテン・メキシコ風)」という副題がついており、曲を構成する4つの楽章は、それぞれラテンアメリカやその周辺の国々の音楽が元になっています。

1楽章「Son Montuno(ソン・モントゥーノ)」

カリブ海の音楽スタイルの一つ「カリプソ」にまつわるリズムが元になっている楽章です。「ソン」とはキューバの歌曲形式を指していて、「モントゥーノ」は歌の掛け合いという意味合いがあります。
たくさんの打楽器が刻むリズムによって生まれる2-beatの上で、軽やかな旋律と伸びやかな旋律が絡み合いながら終始奏でられます。

2楽章「Tango(タンゴ)」

一般的にタンゴといえば、ピアソラが有名な「アルゼンチンタンゴ」をさすことが多いと思います。しかしこの楽章で元になっているタンゴはピアニストのナザレが大成した「ブラジルタンゴ」です。穏やかな4-beatのリズムに乗せて、木管楽器の優雅な旋律が滑らかに奏でられます。
この楽章がイメージしている風景は「サルガッソー海」という北大西洋の海域で、波がほとんど無く、世界一透明度の高い海として知られています。めちゃくちゃ綺麗な海です、ぜひ調べてみてください!

3楽章「Guaracha(グァラチャ)」

この楽章は、アルゼンチンの活気にあふれた酒場を象徴する楽章となっています。2楽章の風景とは打って変わって、軽快でおどけた楽しいリズムがガチャガチャと奏でられます。
ドラクエをやったことがある方は、ドラクエに出てくる酒場をイメージをしていただけると分かりやすいと思います。

4楽章「Paso Doble(パソ・ドブレ)」

メキシコ由来のリズムがこの最終楽章では主軸となります。このリズムの起源はスペインにあるそうですが、その後メキシコに持ち込まれたもののようで、音楽は全体的にスペインを想起させるものとなっております。
冒頭には闘牛の幕開けを表すTrumpet、Clarinet、Fluteのsoloが響き渡ります。タイトルの「パソ・ドブレ」は「2拍子」を意味しますが、曲中では5拍子や3拍子のリズムがメインに奏でられます。優雅な踊りや堂々とした行進をイメージさせるような曲調が展開され、最後は様々な旋律が絡み合って全体で最高潮に達し、リズム良く幕を下ろします。

星の生まれる場所でとは打って変わって、とてもハイテンションな楽曲です!演奏会の最後はラテンの世界で楽しい雰囲気に包まれて終わりましょう!

おわりに

とても長い記事になってしまいました。。ここまで読んでくださり、ありがとうございました!この記事を読んで、第9回定期演奏会が少しでも楽しみになった方がいらっしゃれば幸いです。

3月5日(日)は、高槻現代劇場中ホールへお越しください!ご来場、心からお待ちしております!

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